今回の旅行ではグジャラート州パタンと手工芸が盛んでテキスタイルの聖地と言われるパキスタン国境に近いブージとバン二エリア(クッチ大湿原)をめぐる日程としました。

デリー Delhi

日本を11時半に発ち、インド航空の直行便で10時間、18時にニューデリーに着きました。翌日、市内にでると象が歩いていました。さすがインドですね。専用車で世界遺産クトゥブミナール(世界一高いミナレット)、ムガール建築の傑作世界遺産フマユーン廟、ラージガート(マハトマ・ガンジーの火葬された場所)をまわり、最後に国立工芸博物館を訪問しました。インド各地の住宅やオブジェが野外展示され伝統工芸や織物を見ることができ大変勉強になりました。

アーメダバード Ahmadabad

ニューデリーから空路グジャラート州のアーメダバードに移動しました。英国統治時代から綿織物工業が盛んでインドのマンチェスターと呼ばれた工業都市です。またマハトマ・カンジーがインド独立運動の拠点としたことや、イスラム建築、ヒンドゥー教、ジャイナ教の寺院の彫刻が優れていることから世界遺産都市に認定されています。

ガンジーの活動拠点のガンジー・アシュラムではガンジーが綿糸を紡いだ場所を見ることができました。アーメダバード最大のモスク、ジャママスジットでは礼拝堂の中に装飾された260本もの石柱がぎっしりと立ち並びスペイン・コルドバのメスキータのようでした。その後ジャイナ教(信者が人口比0.4%)の寺院を訪問しました。寺院全体に精緻な彫刻がされていました。

パタン Patan

アーメダバードの北130キロ、650年間グジャラートの首都として栄えたことから多くの歴史的建造物があります。なかでも有名な世界遺産女王の階段井戸を見に行きました。井戸といっても地下7階建の巨大建造物で細部に彫刻を施された見事なものでした。

モデラー太陽寺院 Modhera Sun Temple

パタンから35キロ、ヒンズー教の太陽神スーリヤを祀った寺院、内部の柱などにカジュラホの寺院に見られるようなエロチックな彫刻がありました。

ブージへの道 Road to Bhuj

モデラーからパキスタン国境に近いブージまで320キロを一気に専用車で走りました。ブージの手前に広大な塩田があり美しい夕日を見ることができました。

ブージ Bhuj

ブージはインドの西端、パキスタン国境に近いカッチ湿地帯の中心でかつてカッチ王国の首都でした。宮殿(プラグ・マハル)では19世紀の王国の繁栄を、白亜のスワミナラヤン寺院ではヒンズー教建築の精緻を見ました。ブージ市内は活気に満ち溢れ、カラフルなサリーを纏った女性たちが歩き、手芸店には豊富な手芸用品が並んでおり、ちょうど豪華な結婚パレードを見ることができました。

カッチ博物館 Kutch museum

グジャラート州最古の博物館です。1階にはカッチ地方の民族文化や歴史に関する展示、2階には刺繍などの布製品・食器類など伝統的な工芸品が展示されています。特に2階の展示は素晴らしくカッチ地方各地の多様な染織りや刺繍のコレクションは大変勉強になりました。

ワジール・コレクションWazir Collection

カッチ地方のアンティーク織物コレクターのAA Wazir さん宅を訪問し膨大なコレクションを見せていただきました。中でもラクダ用の織物は珍しいものでした。将来博物館を作りたいと仰っていました。

ブージ周辺の村には多様な手法の染織りや刺繍の工房があり、今回はその村々を専用車で回りました。

ラバリ刺繍 Rabari embroidery

刺繍で有名な少数民族のラバリ族の村に行きまし。道傍では娘さんが小さな鏡を埋め込むミラーワークを刺していました。刺繍作品を沢山拝見し一部を購入させていただきました。

カッチ大湿原(塩の平原) Great Rann of Kutch (White Rann)

乾季(冬)にカッチ大湿原が干上がって出現する塩の平原(ホワイトラン)を見に行きました。

メグワル族の村 Villages of Megwar tribe

カッチ湿原に点在するメグワル族の村々(不可触賎民として差別されたため街の近くに住めなかった)を訪ねました。円筒形で外周に絵が描かれたファンシーな家に住み、女性はエプロンの様な前掛けに細かな刺繍を施した美しい民族衣装を着ていました。陶器を焼く村ではインドを代表する女性陶芸家に会い、湿原を馬で走る男性にも会えました。

ムンバイ Mumbai

ブージから空路ムンバイ(旧ボンベイ)に移動しました。

かつてボンベイと呼ばれていた西インド最大、世界第6位の人口を誇る国際都市です。英国植民地時代にヴィクトリア・タ-ミナルと呼ばれたチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅はコロニアル建築の代表的な建物で世界遺産に登録されています。アラビア海に面したインド門はムンバイのタージマハルとも呼ばれ、その向かいにはインドを代表する最高級ホテルのタージマハルホテルが立っています。近代的な都市とは裏腹にドービーガート(洗濯場)には混沌としたインド庶民の生活がありました。

ムンバイを17時半に発ち、ニューデリー乗り換えで帰国の途について、翌日の午前8時に成田につきました。

おわりに

グジャラート州は日本であまり有名でありません。アーメダバードやブージといった地名も今回の旅行で初めて知りましたが、染織りや刺繍などの手芸を学ぶ者には理想郷でした。機械化されていない多様な染織り手法や精緻な刺繍技術が現存し、祭りや結婚式の様な特別な機会ではなく日常の生活の一部として着用されているのです。近代化に伴い伝統的なものが廃れている国が多い中で正に奇跡のようです。

今回はインドの旅行会社の東京事務所経由で手配をお願いしました。特にアーメダバードからブージまでは専用車とスルーガイド(インド人)をつけてもらいました。おかげさまでこちらの希望を本当に良く叶えて頂けました。彼らなしには今回の旅は実現できなかったと思います。また訪問した工房のみなさんも我々二人のために親身にご案内いただき誠に感謝に耐えません。

出発前は色々な方から忠告をいただきました。例えば「旅行中必ず下痢をするので、生水を飲んではいけません(ミネラルウォータを飲みなさい)、サラダは食べてはいけません(洗った水が汚染されている可能性があります)。インドのカレーはものすごく辛い。治安が悪いので気をつけたほうが良い」といったことです。しかし実際はそんな心配はありませんでした。生水はのみませんでしたがサラダは食べました。でも一度も下痢はしませんでした。西インドのカレーはあまり辛くなくベジタリアンが多いため野菜のカレーが中心で食べやすく大変美味でした。田舎に行くと貧しい人も多く動物も痩せていいました。しかし皆さん明るく良い人で治安に不安を感じることもありませんでした。

インドは広く歴史と文化に富んだ活気ある魅力的な国でした。次回は東インド・南インド、さらには北インドの山岳地帯などへ行きたいと思っています。