2022年のスペイン旅行でラガルテラとロルカを訪ねました

ラガルテラでは村の宗教行事と当日伝統的な衣装を纏う人々の様子とご当地の女性たちの手刺繍による美しいテーブルクロス、テーブルリネン(マット、ナプキン、ポットカバー等々)、ベッドカバーや枕カバーそしてクッションカバー、カーテンなどに生かした刺繍スタイルを見てきました。

ロルカでは刺繍博物館でセマナサンタで使用する為に聖書のストーリーから描き出した多彩なデザイン(キリスト、マリア、悔悟者、エジプトのクレオパトラ、ローマの軍人など)そして、手刺繍で仕上げられたショールコレクションとチームで制作する作業ルームの現場を見学。さらに教会でシスターの皆さんの手による金糸刺繍の様子を見学することができました。

これは是非実際に纏う姿とプロセッションを見てみたいという気持ちが高まり2023年4月再びスペインを訪れました。今回の旅の様子はHP聖週間のスペイン周遊(SEMANA SANTA2023)でお伝えしています。

今回のスペイン旅行ではセビリアの刺繍工房を訪問しました

セビリアはフラメンコの本場です。フラメンコで使用される華やかな衣装や豪華なショールに刺繍が施されています。1565年から300年間スペインの植民地となったフィリピンから中国南東部で生産された贅沢な刺繍を施した絹のショールが到来し、その影響からManton de Manila(Manila shawl)が生まれアンダルシア地方の正装に使われるようになりました。

訪問したManuela Romeroは創業以来60年の老舗工房でセビリアのグアダルキビル川の西岸にあります。主にフラメンコや正装用の大判のショールやフラメンコ衣装に羽織る小さいショール、さらに現代の感覚を生かし多彩なものつくりにチャレンジしています。

三代目のお嬢様ファティマ(Fatima)先生に出迎えていただき刺繍の制作工程や作品を見せていただきました。工房での先生の印象は伝統を継承し丁寧な指導、制作をされている様子が工房訪問を受け入れ実際に接して下さった雰囲気で伝わってきました。温かい応対に感謝いたします。

セビージャの刺繍工房Manuela Romero

刺繍工房/ワークショップも開かれています。

糸の説明/絹糸を使用 5番糸より少しだけ細い感触でした。

デザインの説明とトレースの説明/アジア的なモチーフが主のようですね。スペインが進出した相手国からの文化や自然界から描き出されたデザインですね。

とても複雑で繊細なラインが描かれています。大きなショールの4分の1部分のデザイン画です。出来上がりサイズの布に4回この図面ラインをトレースすることになるのですね。OMGです。


異なる花のデザインを拝見しました。

完成しているショール/使っているステッチはストレートステッチ 1種です。

シルク糸の効果で美しいグラデーションが冴えます。ショールはかなり重いです。

表裏同じ模様(リバーシブル)が見事に刺繍されています。

とても丁寧に刺繍、グラデーションが綺麗。艶やかに華やかで上品な作品です

羽織るとこんな具合。素敵ですね。

これは正装としても纏うショール。

羽織らせてくださいました。ずっしりと重いです。きちんとしたスーツやワンピースに羽織ったら素敵でしょうね。

美しい作品です

角枠に布を貼り下からライトを当ててデザインをトレースします。黒い布には白色のペンで、白い布には黒色のペンを使います。

トレースも綺麗!

指導用のサンプル刺しです。

表裏デザインが同じように出るようにするため糸に玉結びは作りません。

こんなふうにね。と見せてくれました。

さし始めが綺麗に決まりました。

羽根をふっくらと表現するための説明をしてくださいました。

グラデーションの説明をしてくださいました。

糸のトーンを考えてグラデーションで花を表現して行きます。

予定に入っていなかった突然のワークショップ。緊張しました。両手を使って刺繍します。わたしは普段左手が上、右手が下。先生は右手が上、左手が下。先生もわたしも右利きです。わたしの手の使い方にビックリしていました。ホントにあなた右利きなの?と3回くらい確認されました。

出来上がりはどうでしょうか?ぎこちない部分は笑って忘れてくださいね。

フリンジの説明です。たっぷり糸を使って編みあげてゴージャスに仕上げています。

フリンジの編み上げ方を見せてくださいました。

ファッションショーで紹介した作品が本に。素晴らしい!

ファティマ先生オリジナルの新作品です。多様な刺し方を取り入れています。これはリバーシブルではありません。

デザインを表現するために様々なステッチを使用、繊細なタッチで刺繍しています。

お母様の作品です。素敵ですね。ため息が止まりません。

こちらの作品も羽織らせてくださいました。幸せな一瞬、ありがとうございます。フリンジもご覧ください

レースを取り入れゴヤの絵の一部分を刺繍し扇子(アバカス)のデザインに。

芸術ですね。

細かい部分を表現する場合は一本の糸をほぐして細くして刺繍しますとのこと

見れば見るほど技術の素晴らしさに感動します。

広げてみました。デザイン、刺繍テクニック そしてフリンジもお見事です。

作者の現代的センスを活かしたショール。良いですね。欲しくなってお値段を聞いてみました。ウン十万円でした。

お似合いですね。ピッタリ、しっくりです。

こちらも先生の作品です。

フラメンコのドレスに羽織って使う小さめのショール。小さくても手抜きの無い上質のショールです。

色が変わると雰囲気もまた違った印象に。どんなドレスに合わせるのでしょうね。

素敵です。

昨年、今年と2回のスペインへの旅でラガルテラではテーブルクロスなど実用的な刺繍、ロルカでは宗教行事のための絵画のような刺繍と金糸刺繍、セビリアの刺繍工房ではショールに施すおしゃれな刺繍を見ることができました。またプラド美術館の絵画などから王族貴族が纏っている衣装からも多彩な刺繍を見ることができ学びのある嬉しい旅となりました。

参考


ロルカのセマナ・サンタのプログラム冊子(2023)


ロルカのセマナ・サンタのガイドブック(2023)


Emiliano Rojoの作品集 (Museo Azul)


Bordado Pas Blanco


ラガルテラのCorpus Christi祭り(2022)

ラガルテラの民族博物館

Lagartera Embroidery and Stitches from Spain


El Traje de Lagartera

Espana a mano (Handmade Spain)