アガ民族博物館
ハーダンガー民族博物館の学芸員さんのアドバイスでアガの民族博物館とボスの民族博物館にもハーダンガー刺繍のコレクションがあることが分かり行く事が出来ました。アガはウトネから車で30分ほど離れた村ですが時間的に交通手段がありませんでしたが、ありがたいことにウトネの学芸員さんがご自分の車でアガの民族博物館まで送って下さいました。フィヨルドを挟んで両岸の高い岩壁から落ちるいく筋もの滝を見ながら雨の中のドライブでした。博物館への入り口となる小道の掲示板に美しいポスターが貼られていました。ハーダンガーの民族衣装の特別展の案内です。ウトネに入って始めて知り得た情報です。学芸員さんに御礼をお伝えしてここでお別れしました。感謝の気持ちでいっぱいです。帰国後 ヴォーグ社発行のステッチデイと手づくり手帖をお送りしました。
登りの小道を少し歩いて行くと古民家が点在しています。ガイドツアーは3時にスタートとの事でしたのでテイーハウスでコーヒーをいただきながらひと休み。民族衣装を見学したい事を伝え案内の学芸員さんを待ちました。やがて女性の学芸員さんが鍵を持って一軒の古民家の扉を開け部屋のライトをつけてくれました。先ず織り機が置いてありました。次の部屋には民族衣装と胸あてやリボン、エプロン、ブラウス 、 スカート、写真等々小さな部屋に隙間なく展示されていました。学芸員さんはバルセロナの大学で勉強をされたとのことで英語とスペイン語での会話となりました(私も3年程マドリードで暮らしておりましたので多少スペイン語ができます)。ひとつの写真フレームを取り上げてここのコレクションは一人の女性の物で自身で刺繍した衣服と家に代々伝わってきた衣服、お母さん お婆さん ひいお婆さんとそれぞれの時代に必要な衣服を作り保存してきたものですとのことを話して下さいました。この写真は寄贈者の15歳の時撮影されたものですとのこと。衣服すなわち展示されている民族衣装は産まれたばかりの赤ちゃんのために用意されたものから成長に沿って制作されたサイズの違う
衣服、もちろん全てにハーダンガー刺繍が施されています。一針一針刺繍をしてベビー用品を揃えて新しい家族を迎えていたのですね。織り機の上に彫刻をした手製のアイロンが置かれていました。やはり、花婿が花嫁の為に用意したアイロンです。幾つかの質問をさせていただきました。この辺の地域にはハーダンガー刺繍をしている方や皆で集まって刺繍をするグループがありますかとの問いには、たぶんいないでしょう。もう必要がないし時間がかかります。でも特別な日には伝統的な民族衣装を着るそうです。仕立ててもらうために時間を十分にとってどこかにオーダーメイドするそうです。係の女性の民族衣装はグリーンをベースにしたそうです。色を選ぶために特に意味を考えますかとの問いには個人的な考え方ですけれど自身の好きな色だからだそうです。では販売されているハーダンガー刺繍の品々はどこで制作されているのでしょうねと聞くと、アフリカでハーダンガー刺繍を作っていると聞いています。工賃が安いそうです。
うーん 伝統を受け継いで繋いでゆく事の難しさをこの地でも知る事になりました。でも どこかで受け継がれて行くのですね。仕事にして現金収入が得られ生活が向上する地域も発生する事になります。たぶん ハーダンガーでも静かに 密やかにひと針ひと針刺繍を続けている女性はいると思います。との事でした。
楽しい時間を過ごさせていただきました。バスに乗り遅れるとウトネに戻れなくなります。御礼とお別れの挨拶をしてサクランボ畑とリンゴ畑を見ながらバス停まで20分程歩きました。