奄美大島に行ってきました

フランスのゴブラン織、イランのペルシャ絨毯と並ぶ「世界三大織物」に数えられ、絣織(かすり)の頂点と言われる大島紬の工房を訪ねるため奄美大島に行ってきました。

大島紬の製造は①図案制作②整経③糊はり④締め加工⑤泥染め⑥加工⑦製織の工程が分業で行われています。できるだけ各工程の専門家にお話を伺いたいと思い調べた結果、夢おりの郷(全体の流れ)、金井工芸(泥染め工程)、龍郷町大島紬技術者養成所(製織工程)、大島紬美術館(作品鑑賞)を訪問することにしました。

奄美空港到着後レンタカーを借り、まず「夢おりの郷」に向かいました。

夢おりの郷

夢おりの郷は、「伝統とは常に新しい挑戦の積み重ね」をモットーに新しいものづくりを続ける大島紬の織元で、大島紬の原料である絹も奄美産にこだわり奄美での養蚕を復活させ、図案、締め、染め、加工、製織まで一貫した工程を行っています。
今回、南 晋吾社長と本場奄美大島紬伝統工芸士会会長の南 愛子様(ご母堂)にご案内いただきました。

見学の詳細は動画版をご覧ください(15分42秒)

翌朝、名瀬から泥染めの金井工芸に向かいました。

金井工芸

奄美大島でしか行っていない伝統的な染色技法「泥染め」、大自然の恵みを活かし、先人の知恵を伝承する、「泥染め」の第一人者の金井一人さんにご案内頂きました。

見学の詳細は動画版をご覧ください(17分33秒)

2月の奄美大島は寒緋さくらが満開です。

昼食後、龍郷町大島紬技術者養成所に向かいました。

龍郷町大島紬技術者養成所

龍郷町の基幹産業である大島紬の振興と発展を図るため、大島紬産業の担い手としての後継者育成を目的に設立され、養成期間2年・受講料無料で運営されています。龍郷町には二ヶ所の養成所があり今回訪問した瀬留養成所には7名の方がいらっしゃいました。年配の方が中心で若い方は一人でした。縦糸と緯糸を図案通りに織るため、5センチほど織る度に織り機を緩めて縦糸を調節し、緯糸を通す度に縦糸との交差を一本一本合わせる細密な作業に驚嘆し、大島紬が染織りの頂点と言われることを実感しました。

見学の詳細は動画版をご覧ください(10分49秒)

午後、草木染めに使用されるフクギ(福木)の並木がある国直海岸に行きました。

国直海岸

奄美市名瀬から車で西に約30分、美しい海岸とフクギの並木のあるのどかな集落です。アダンの下に天然記念物のオカヤドカリが集い、ウミガメが産卵に訪れ、真西に向いて開かれているため、夕陽が正面の海に落ちていくのが見えます。

美しい海岸とガジュマルの木、田中一村の絵の世界そのものです

詳細は動画版をご覧ください((1分20秒)

最終日朝、名瀬から大島紬美術館に向かいました。

大島紬美術館

大島紬を製造販売する織元として大島紬の心を後世に繋いでゆきたいという想いからホテルなど多様な事業を行なっており、その一環としてホテルの2階に大島紬美術館が開設されています。

ホテルティダムーン

2階の大島紬美術館入り口にある12マルキの超絶細密技法による作品「紅白梅図屏風」


大島紬美術館HPより転載

最後に、空港近くの田中一村美術館によりました。

田中一村美術館

昨年、作品の大半を上野の東京都美術館の特別展で見ていましたが、描かれた地でみる作品はまた別の趣がありました。
美術館の周りは田中一村の作品に登場する植物が植えられていて田中一村の世界を堪能することができました。

終わりに

2020年、 信州の松本紬と上田紬の工房の訪問をスタートに日本国内の染織りの旅が始まり、今回念願の奄美大島への訪問が実現しました。これまで各地の工房を訪問して皆様からたくさんの学びを得ることができ心から感謝しております。

大島紬は一反を完成させるためには30工程を経ています。その制作工程は分業化され、それぞれの分野の専門家が設計図に従い極めて精緻な技術でプロセスを進めてゆきます。出発の前に本やユーチュブで繰り返し予習をしてきましたが、現場で極致の技を体感し、これぞまさしく染織りの最高峰と感嘆しました。訪問先で貴重なお時間を頂戴しお話を伺えたことは大変ありがたいことでした。

私の手元には収集したり、お母様がきていた着物ですがと洗いはりをして綺麗に整えてお送りくださった布(人間国宝の方の作品でした)や、仲間がわけてくれた布があります。それぞれの布のストリーをできるだけ知った上で大切に使わせていただこうと思っています。

 

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