聖週間のスペイン(マドリッド、トレド、セビリア、ロンダ、グラナダ、ロルカ、コルドバ、バルセロナ)

昨年スペインのロルカの刺繍博物館を訪問し素晴らしい金糸刺繍を見ました。この豪華な刺繍を施された衣装を着たパレードがあることを改めて知り、これは実際に見なければと思い、今年はパレードのあるセマナ・サンタ(聖週間:4/2-4/9)の時期に再びスペインに行くことにしました。

折角ですからロルカはパレードのピーク4/7(聖金曜日)に合わせ、その前の4/2(枝の主日)にマドリッドに入り、4/4(聖火曜日)はセビリア、4/5(聖水曜日)はロンダ、4/6(聖木曜日:最後の晩餐の日)はグラナダ、4/7(聖金曜日:イエス磔の日)はロルカ、4/8(聖土曜日:復活の前日)と4/9(復活祭:イエス復活の日)はコルドバ、最後にバルセロナを回るコースとし、その間でアンダルシア地方の白い村を二個所(オルベラ、ベレスブランコ)立ち寄ることにしました。

またセビリアでは刺繍工房を見学します。なお今回は友人3人も加わり5人の旅行となりました。

旅行の基本部分(往復の航空機、マドリッド2泊とバルセロナ2泊のホテル、マドリッド〜セビリアとコルドバ〜バルセロナの鉄道)はSTW社のパッケージツアーを利用し、セビリアからコルドバまでの区間の手配(ホテル、専用車、ガイド、桟敷席、入場券)をオンラインで行いました。田舎の自宅で直接手配できるとは便利になったものです。

航空会社はカタール航空です。ドーハ乗り換えでマドリッドまで23時間15分もかかりますが、成田を22:30発なので出発日が楽、一眠り(12時間)するとドーハ、3時間45分乗り継ぎは空港の設備(免税店や飲食店)が充実していて過ごし易く、マドリッドまでの7時間半も更に一眠りでそれほど苦痛ではありません。機内食も美味しくトイレなどの設備やサービスも良く快適な航空会社です。

ドーハ空港乗り継ぎ、ターミナルA,BからC,Dに移動するのにモノレールに乗ります 27秒

マドリッド

14:25マドリッド空港到着、シャトルバスでアトーチャ駅へ、始発なので荷物置き場も空いていて無事乗車できました。個人旅行で一番困るのは荷物(スーツケース)の運搬です。公共バスや鉄道に乗るときに荷物置き場が空いていないと大変です(鉄道の場合は座席の上の棚に載せなければなりません)

ホテルはアトーチャ駅前のオンリー ・ユー ・ホテル ・アトーチャ、駅から200mほどで地下鉄の駅の入り口がホテルの前にある大変便利で設備も良く朝食が素晴らしく美味しいホテルです。

チェックイン後、地下鉄でソル広場に行きマヨール広場を見てサンミゲル市場に行きました。市場は多くのバル(立ち食い方式の店)が店を開き真ん中のエリアで飲食するようになっています。

ソル広場のくまの像

マヨール広場

サンミゲル市場

サンミゲル市場の外でバンドの音がしました。通りにでるとセマナ・サンタ(聖週間)のプロセッション(宗教行列)が来ました。

スペインの夕食には早いので(19:00頃)バル(居酒屋)に入りました。生ハム、コロッケ、といった定番メニューにパエリアを注文しました。

トレド

翌日、マドリッドが首都になる前の首都である古都トレドに行きました。展望台からタホ川の対岸に広がるトレドを見て、市内に入りサントトメ教会でエルグレコのオルガス伯爵の埋葬を見てから大聖堂に行きました。壮大な聖堂の中でマリア様の像が印象的でした。

トレド全景

サントトメ教会

エル・グレコ作オルガス伯爵の埋葬

トレド大聖堂

マリア様の像

午後、マドリッドに戻りプラド美術館に行きました。30年ぶりです。入り口や展示室が変わりどう回って良いのか分からなくなりました。でも作品はそのまま、エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤなどの名品はやはり素晴らしい。堪能しました。

プラド美術館

夕食はスペイン北部のガリシア地方の海鮮料理です。日本人の味覚にぴったりです。

セビリア

マドリッドを新幹線で9:05に発ち11;28にセビリアに到着しました。指定された号車側に荷物置き場がなく、慌てて隣の号車側の荷物置き場になんとか荷物を置くことができほっとしました。

セビリア駅から専用車で創業以来60年の老舗刺繍工房Bordaos Manuela Romeroに向かいました。工房では三代目のお嬢様ファティマ(Fatima)さんに出迎えていただき刺繍の制作工程や作品を見せていただき大変勉強になりました。

セビリアの刺繍工房 1分27秒  工房見学の詳細は「セビリア刺繍」をクリックしてご覧ください

昼食後、スペイン広場とアルカサルを観光しました

スペイン広場、1929年に開催された万国博覧会の会場として造られた公園

セビリアは聖週間期間中大聖堂周辺が交通規制のため車が入れません。今回宿泊のホテル・ドナ・マリアが大聖堂の目の前のためホテルの前まで車が入れず300メートルほど離れた黄金の塔の前で降り荷物を転がしながら歩いて行くことになりました。

聖堂の周りは桟敷席で取り囲まれ、その周りもプロセッションの出発を見ようとする人で一杯で歩くのも大変です。

夜、フラメンコを見に行きました。20:45からのセカンドショーです。1時間15分の熱演を舞台の最前列で見ました。凄い迫力、これがフラメンコと感動しました。

セビリアのフラメンコ 34秒

フラメンコが終わってから遅い夕食(スペインでは普通ですが)をとりホテルにかえりました。大聖堂のヒラルダの塔がライトアップされてきれいでした。

通りがかりのレストランでしたがこれが大当たりでした。

翌朝、大聖堂に入りました。ゴシック様式とルネサンス様式が混合するスペインで最も大きな大聖堂で中にコロンブスの墓がありました。高さ94mのヒラルダの塔にも登りました。延々とスロープが続き疲れましたが鐘楼からの眺めは素晴らしかったです。

セビリア大聖堂全景

大聖堂内

主祭壇

コロンブスの墓

ヒラルダの塔の頂上、鐘楼からの眺め

オルベラ

午後、専用車でセビリアを出てアンダルシア地方の白い村の一つオルベラに向かいました。小高い山に作られた村で頂上に教会とお城があります。あまり有名でないせいで観光客はほとんどいない静かな村で昼食をとりましました。

オルベラ 26秒

ロンダ

昼食後、絶壁の白い村ロンダに向かいました。高さ98メートルのヌエボ橋と最古の闘牛場で有名です。ヌエバ橋を見上げる写真が撮りたくて谷底の展望台まで降りました。絶景を楽しめましたが帰りの登りが大変でした。

ヌエボ橋からの眺め

展望台への道

高さ98メートルのヌエバ橋とパラドール

ロンダの闘牛場

夜、聖水曜日のプロセッションを見に街にでました。ソコロ広場に桟敷席が設けられプロセッションの到着を待つ人が集まりはじめていました。夕食をとり宿舎のパラドールに戻り深夜0時に沈黙のプロセッションを見ることができました。音もない厳粛な行進です。

桟敷席

桟敷席の近くのバルで夕食です

ロンダの沈黙のプロセッション 1分

朝、部屋からの眺め、絶景です

グラナダ

翌朝、ロンダを発ってグラナダに向かいました。グラナダはアルハンブラ宮殿内のホテル・アメリカを予約しました。パラドールの隣のホテルで割安ですが宮殿内というロケーションは抜群で静かで良いホテルでした。

アルハンブラ宮殿は大変広くナスル宮殿とヘネラリーフェ庭園を回ると2時間から3時間かかります。今回は宮殿内にあるホテルのメリットを活かし、先ずヘネラリーフェ庭園を見てからホテルに戻って昼食休憩をとり午後ナスル宮殿をまわりました。

ヘネラリーフェ宮殿

ナスル宮殿

ライオンの中庭

アルハンブラ宮殿 1分17秒

午後、バスで大聖堂に向かいましたが聖週間の交通規制で2キロほど手前で降ろされてしまい、そこから歩くことになりました。

1キロほど歩くとプロセッションに遭遇し行列と一緒に大聖堂を目指しました。途中で桟敷席のある地区になり他のプロセッションも見ました。行列から離れイザベル広場を目指しました。広場で他のプロセッションを見て大聖堂の裏手の路地のバルで夕食をしました。どの店も満員で外の席の横を大勢の人が通ります。ビールを頼むとサービスでトルティージャ(スペインオムレツ)がついてきました。これがグラナダ流だそうです。日がすっかり落ちてイザベル広場でロウソクの灯ったプロセッションを見てホテルに帰りました。

バルで夕食、トルティージャ(スペインオムレツ)はサービス

タパスの定番「コロッケ」

グラナダのプロセッション 2分9秒

ベレスブランコ

翌日、ロルカを目指し途中であまり知られていない白い村ベレスブランコに寄りました。山の上に立派な城のある村でした。

ベレスブランコ城

昼食はパン・コン・トマテ(トマトをぬったパン)とサラダ、素朴で美味しい

ロルカ

昼食後、ロルカに向かい山上のロルカ城の一画に建つパラドールに向かいました。チェックイン後ロルカ城を散策したあとホテルで休み夜のプロセッションに備えました。

パラドール

ロルカ城

城の塔からの眺め

夕方、タクシーで市内に降りて桟敷席に向かいました。桟敷はメインストリートの両側に650メートル10000席が設置された世界最大の劇場となっていました。

プロセッションは夜8時から深夜0時まで4時間通しで行われ参加者数千人、馬数百頭、馬車、フロート、神輿という想像を絶する大規模なものです。市内の教会に属す6つの信徒団(真紅組、紫組、青組、白組、黒組、緑組)がそれぞれ聖書の物語を基にした金糸刺繍を施した豪華な衣装や扮装をしたプロセッションを構成して行進します。

セマナ・サンタのプロセッションの定番である三角帽子の一団が先頭を行き、キリストとマリアの神輿が続き、最後にバンドがでるのは同じですが、ロルカで驚くべきはローマ時代の扮装をした騎士が馬に乗り巧みな馬術を見せ、馬車や戦車がが疾走するのです。このため道路には土が全面的にひかれ馬場になっていました。またエジプトやローマの物語(クレオパトラやシーザー)を演ずる扮装行列やフロートが入るのも特色です。

また桟敷席は信徒団毎に陣取っておりそれぞれのグループカラー(青、白など)のスカーフを付け、神を称える掛け声を大声でだし応援合戦をします。掛け声の音頭をとるのが子供であったりでびっくり、宗教的高揚が充満し、行列の参加者と桟敷席の応援団が一体となって更に興盛り上がり、最後にマリアの神輿が来ると空からは花びらが降り興奮は絶頂となりました。

先頭は三角帽子のナサレノ(悔悟者)、KKKではありません

バナーが続きます

次はバンドです

ローマの軍人の騎士がきます

馬車がきます

バナーを振りながら歩きます。まるで日本の纏持ちのようです

エジプトのパレードです

ローマのフロートです

マリアの神輿です

マリアの神輿に花びらが降りかかります

4時間のパレードを14分23にまとめました。少し長いですが是非ご覧ください

翌日、コルドバを目指して専用車で出発しました。途中世界遺産のウベダとバエサを経由しました。ウベダまでは山道を216キロ3時間ほどです。スペインはどこでも道路が整備されていて快適なドライブです。

ウベダ

アンダルシアの内陸部にありオリーブ畑に囲まれた古都でルネサンス様式の建築群が見られます。オリーブ畑を見渡す屋外レストランの昼食は爽やかで美味しかったです。

オリーブ畑

左はパラドール、中央はエル・サルバロード教会

エル、サルバロード大聖堂

トマトにアンチョビ、美味でした

バエサ

ウベダから10キロ、オリーブの木が広がる街には石畳の通りがあり、ヨーロッパで最も保存状態の良いルネサンス様式の建物がある落ち着いた街でした。

ポプロ広場

大聖堂

オリーブ畑の広がる道をコルドバを目指します。

コルドバ

聖土曜日(キリスト磔死の翌日)のコルドバに到着しました。ホテルがメスキータの前というロケーションのため道路規制で宿泊するユーロスター・マイモニデス・ホテル前まで車が入れず200メートルほど離れたアルカサルからスーツケースを転がして歩きました。

夕食後、ローマの橋を渡り、グアダルキビル川の対岸からライトアップされたメスキータを見ました。ホテルに戻る道でメスキータを覗くとオレンジの中庭に人が集まっていました。近づくと宗教儀式が行われたおり、終わるとメスキータの中に入って行きました。ついて行くとイスラム建築の馬蹄形アーチの広間を抜けてキリスト教の大聖堂に入りミサがはじまりました。賛美歌、聖書の一節の拝読、司祭による講話、が深夜の大聖堂に響き荘厳でした。

アンダルシア地方料理の定番「ガスパチョ」です

コルドバ名物「ラボ・デ・トロ」牛テールの赤ワイン煮込み

コルドバの夜 1分

翌朝、この日は復活祭の日曜日です。改めてメスキータに入ると大聖堂でコンサートが開かれていました。賛美歌が響き厳かな気持ちになりました。約850本の馬蹄形アーチの列柱が林立する美しいイスラム建築の広間を出るとオレンジの中庭です。噴水の向こうにミナレット(塔)がそびえ時鐘の音が響きました。門をでて花の小径を見に行きました。小さな路地で見過ごしてしまうほどです。通りの壁に花が飾られ背景にミナレットが入る人気のフォトスポットです。入り組んだ歴史地区を迷いながら歩き街の中心テンディリャス広場に出ました。更に迷いながら歩きシナゴーグ(ユダヤ教会)を見てホテルに戻りました。

コルドバ朝のコンサート 29秒

コルドバ、朝の散歩 2分20秒

夕方、新幹線でマドリッド経由バルセロナに向かいました。宿泊したサンツホテルは駅の中にあり大変便利ででした。

1等車は快適でした

航空機のような夕食がでました

バルセロナ

朝、サグラダ・ファミリア(聖家族教会)に行きました。30年ぶりです。当時に比べ随分と工事が進んでおり素晴らしい聖堂が完成していました。


30年前のサグラダ・ファミリア(聖堂は工事中です)

2023年現在の建築状況(聖堂が完成し中央の塔が建築中)

聖堂の中に入ると伝統的な聖堂とは全く異なる巨大なガウディ独特の森をイメージした列柱とステンドグラスに包まれた大空間が現れ圧倒されました。

受難の塔(65メーター)に登りました。行きはエレベーター帰りは階段です。

鐘楼を飾るガラスモザイクのオブジェクトです。手前の青い方は「フリューロン」と呼ばれる花形装飾のオブジェクト、奥の赤い方は聖マタイの塔を飾る頭文字のMのオブジェクトです


展望台からの眺め


下りの螺旋階段

塔から降りて生誕のファサードと受難のファサードを見ました。生誕のファサードは1894年に建設が着工され、ガウディがこの世を去った7年後の1932年に、一部の彫刻を除いて工事が完了しました。ガウディ本人が、細部に至るまで設計し、彼が完成に近い状態まで見る事ができた唯一の部分で、出エジプトからキリスト生誕までの場面が彫刻で表現されています。

中央の3人は「聖マリアとヨセフの婚姻式」その下は「イエスとヨセフ」その右下は「ローマ兵による嬰児虐殺」

中央下「イエスの生誕」その上は「楽器を弾く天使」や「合唱する子供達」左下は「東方三賢人の礼拝」

受難のファサードは1954年着工で生誕のファサードと比べてシンプルでモダンです。彫刻は、キリストの苦悩と悲しみがテーマとなっており、最後の晩餐からキリストの十字架磔刑までの場面が12の彫刻群で表現されています。更にその遙か上には復活を遂げた「キリストの昇天」の彫刻も飾られています。

上は「十字架磔刑」その下は「聖ベロニカと複音史家」ゴルゴダの丘に向かう最中でイエスは再び力尽きて倒れてしまいます。この時、エルサレムの女性の一人「ベロニカ」が差し出した布(ベール)で、イエスが顔の血痕を拭うと、その布にイエスの顔が浮かび上がったという奇跡の場面

「ペテロの否認」イエスの12使徒の一人「ペテロ」が、イエスの事を三度「知らない」と答えた場面、臆病な自身の心とイエスに対する裏切りに苦悩するペトロ

キリストの昇天

午後、聖地モンセラットに行きました。スペイン広場から鉄道で1時間、登山電車に乗り換えて標高720メートルの修道院に到着、更にケーブルカーに乗り換えサン・ジョアン展望台に登りました。絶景です。修道院では御本尊の黒いマリア像を間近に拝謁することができ良い思い出となりました。

サン・ジョアン展望台へのケーブルカー

サン・ジョアン展望台からの眺め

モンセラット修道院全景

御本尊の黒いマリア様、予約またはTrans Montserrat Ticketを持っていると目近で拝観できます

翌日の午前は自由行動、我々はピカソ美術館に行きました。幼少期から老年期までトータル4,251点もの作品が展示されているため、時代とともに変わる作風を見ることもできました。83点ほどの作品を撮影してきました。よろしければご覧ください

午後、バルセロナ空港から帰国の途につきました。乗り換えのドーハ空港ではプライオリティパスを利用してアルマハ・サロン(空港ラウンジ)で休憩でき快適でした。

おわりに

今回はロルカのパレードを見ることが最大の目的でしたが期せずしてマドリッドからコルドバまでセマナ・サンタ(聖週間)を追う旅行となりました。特にセビリアとグラナダはプロセッション(宗教行列)がたくさん出ることから市内中央は交通規制がひかれ車が入れず、大勢の人が集まり歩くのも大変な程でした。日中は観光、夜は祭りと、朝から深夜まで充実した旅行でした。

セビリアの刺繍工房でショールに施す美しい「おしゃれな刺繍」を見ることができました。ラガルテラの刺繍はテーブルクロスなどの「実用的な刺繍」、ロルカの刺繍は「宗教行事の金糸刺繍」と、使用目的に応じた三種類の刺繍を見ることができました。

専用車(VAN)の手配をGetTransfer.comというサイトで行いました。Uberのような配車アプリですが長距離の専用車手配が簡単にでき費用も割安でした。でも最初のマドリッド空港に配車されないというトラブルに会いました。その後は前日にリコンファーム(システムの中にドライバーとメールする機能があります)することで問題なく利用できましたが、旅行会社を使わずネットで手配するOTA(Online Travel Agent)はリスクを承知で上手に使う必要があると思い知りました。

 

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