絣織りの起源は7〜8世紀ごろのインドのラジャスタン地方と伝えられています。やがてシルクロードにより西はヨーロッパを経由して中南米、東は東南アジア諸国を経由して日本に伝わりました。

2005年に中米のグアテマラで初めてIKAT(絣織り)を見てから絣織り伝播の道を訪ねる旅をはじめ、インド西北部のグジャラート州パタンをはじめミャンマー・ベトナム・カンボジア・ラオス・タイ・インドネシアの工房を訪ね、昨年から日本での伝播の道を辿る旅をはじめ、まず沖縄の那覇に琉球絣と首里織を、次に長野県の松本と上田を訪ねました。

そして今回は茨城県結城に結城紬を訪ねました。

結城紬(ゆうきつむぎ)

日本三大紬(大島・結城・牛首)の一つに挙げられ、①蚕の繭をゆでて糸をとる通常の方法ではなく繭から袋状の真綿(まわた)を作りそれから手作業で糸を紡ぎ②手作業で糸をくくって絣模様を先染めし③地機(じばた)という原始的な織り機で織るという3工程が国重要無形文化財に指定されユネスコ無形文化財に登録されています。
https://story.nakagawa-masashichi.jp/craft_post/119997

結城市は栃木県との県境にあり池袋から湘南新宿ラインで小山まで80分、水戸線に乗り換えて10分ほどですので東京からは日帰りで行けます。

いつものように生産者(作家)の方にお会いしお話を伺いたいとネットで結城市内の工房を調べたのですが博物館や問屋の情報はあっても工房の情報がありません。「ゆうきの館」という博物館がありますが問屋さんの運営ですので生産者のお話が伺えるかどうか不安なまま結城に向かいました。

結城駅前の観光案内所に行き工房見学について相談しましたが要領をえません。観光的な案内しかできないようで我々の希望する情報を得られず、近くの結城市観光物産センターに行き、改めて工房見学が可能かを相談しました。すると知り合いの織り手の方を紹介してくれることになりお願いしました。その結果、織り手の方は都合が悪くだめでしたが代わりに結城市伝統工芸館を紹介していただけました。

結城市伝統工芸館

結城市の郊外にある茨城県本場結城紬織物協同組合が運営する施設です。
https://www.ibarakiguide.jp/db-kanko/dentokougeikan.html
幸いなことにNHKの番組(イッピン)の取材のため小島理事長と天皇陛下の前で機織りの実演をされた技術保持者の野村さんがいらしており、詳しくお話を伺ったり、地機による機織りを拝見することができました。

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つむぎの館

結城紬はそれぞれの工程が分業化され結城市内に10軒ほどあるある問屋(縞屋と呼ばれる)が生産をコーディネート(真綿の仕入れ、糸取り・糸染・機織り担当の業者への発注)し販売(マーケティング)する体制になっています。結城市伝統工芸館を見学したあと結城市内に戻り問屋の一つ「奥順」を訪問しました。博物館・工房・展示場を総合した「つむぎの館」という施設になっており結城紬の歴史、制作工程や多彩な織物を見ることができます。
http://www.yukitumugi.co.jp/about/

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結城市観光物産館センターで購入した結城紬のスカーフ

あとがき(結城で学んだこと)

1.紬(つむぎ)はつむぎ糸を使用した絹織物ですが、本来つむぎ糸は繭から直接糸がとれない欠陥のある繭(玉繭)から作る真綿(まわた)から手作業でよりをかけずに糸をつむいだものです。しかし現在ではその風合いの良さから玉繭に限らず正常な繭からも敢えて手間のかかる方法で作られています。

2.結城紬で使用する真綿は福島県伊達市保原の「入金真綿」が使用されています。
http://www.honmono-yukitsumugi.jp/entry/64

3.「糸つむぎ」「絣くくり」「地機織り」という3工程は分業化されており、結城市内に10軒ほどある問屋(縞屋と呼ばれる)が全体の生産をコーディネート(真綿の仕入れ、糸取り・糸染・機織り担当の業者への発注)し販売(マーケティング)を行っています(本場結城紬卸商協同組合

4.製品は問屋ブランドとして販売され製作者の氏名は表にでません。したがって製作者(作家)に会いたい場合は問屋を通さないと実現しません。今回は幸いにも結城市伝統工芸館にて生産者である茨城県本場結城紬織物協同組合の小島理事長と技術保持者の野村さんにお会いでき直接お話を伺えて幸いでした。ご紹介いただいた結城市観光物産センターの栗原さんに心より感謝いたします。

動画版(5.4分)