中国貴州省の少数民族の村に行ってきました
今回の旅行目的は中国貴州省の少数民族(トン族とミャオ族)の村に刺繍と染織りの工房を尋ねることと、桂林の漓江景勝地と上海の夜景を見ることです。
成田を13:50に出発し、上海(浦東)で乗り換え、桂林に20:35に到着しました。9月初旬の桂林は東京の気候とほぼ同じで日中30°・朝晩は22°ほどで快適でした。
桂林(けいりん)
「桂林の山水は天下第一」と称され、水墨画のように美しい奇峰とタワーカルストの絶景で知られる世界的な観光地です。
車を1日チャーターし、筏で漓江を下り、20人民元の裏面に描かれた風景(桂林山水)のモデルとなった興坪古鎮に行きました。ドライバーガイドさんとはスマホのチャット機能と通訳アプリにより日本語で意思疎通を行うことができました。便利になったものです。
夕方、ホテル前の两江四湖景区(桂林市内の四つの湖と二つの川を結ぶ美しい水路)のライトアップされた湖畔を散策しました。
桂林→トン族の村へ(肇興侗寨、肇興侗寨)
新幹線で貴州省の従江まで56分で着きました。発車時間の15分ほど前に乗車案内・手続き(パスポートと予約チェック)がありました。最高速度245キロ、乗り心地良く、定刻発車・定刻到着、日本の新幹線と同様に快適でした。
従江駅に日本語ガイドさん(彭旭:ホウキョク)と専用車が出迎え貴陽空港まで2泊3日貴州省の村村を案内してもらいました。
黄崗侗寨(こうこうトンさい)
宋の時代から800年以上の歴史を誇り、トン族集落の中で最も良く伝統文化が継承されていると言われる村。2025年に国際連合世界観光機関の「ベストツーリズムビレッジ」に選ばれた。まだ観光地化されておらず、生活感が豊かで素朴な雰囲気を残していました。
この村では「亮布(りょうふ)」という、藍染めの布に卵白を塗り、木槌で根気強く叩いて光沢を出す伝統的な織物(ピカピカ布)が作られています。村のどの家にも織り機や藍甕があり、染め上がった布に卵白を塗り、木槌で叩いて艶を出し、水で晒して干す、という伝統作業が村のあちこちで行われ、トントンという木槌の音が響いていました。
肇興侗寨(ちょうこうトンさい)
中国最大かつ最古のトン族(侗族)の集落です。南宋時代(1160年頃)に築かれ、850年以上の歴史を誇ります。「中国で最も美しい6つの民族集落」の一つにも選ばれており、杉の木で造られた伝統的な高床式住居「吊脚楼(ちょうきゃくろう)」が建ち並ぶ、桃源郷のような美しい景観が広がっています。五大鼓楼と風雨橋(花橋)集落は「仁・義·・礼・智・信」という5つの住民組織(団)に分かれており、それぞれの名を冠した5つの鼓楼と5つの風雨橋が架けられています。

攔路酒(道のりを遮るお酒): 村の入り口や門で、民族衣装を着た村人たちが歌や音楽(笙の演奏など)で客人の入村を阻み、手作りの米酒(自家製のお酒)を振る舞って歓迎します。
鼓楼(ころう):村が5つの集団(団)に分かれており、それぞれ「信・義・礼・智・仁」の名がついた5つの鼓楼を持っています。

陸莹妹先生:地元の非遺(非物質文化遺産・無形文化遺産)である「侗繍(トン族の刺繍)」の伝承活動を行っています。自身の村(岑所村)で27名もの刺繍職人を取りまとめ、刺繍製品の注文を受けたり、青年デザイナーとコラボレーションして伝統と現代アートを融合させた100種類以上のオリジナル文创(文化クリエイティブ)製品(刺繡のアクセサリー、扇子、バッグなど)を制作・販売し、地元の女性たちの収入向上に貢献しています。

陸婢処さん(80歳):お孫さん(小学6年生)の結婚衣装を制作していました。布を織り、藍染・柿渋などを塗って木槌で叩いて亮布(りょうふ)を作り、仕立てを仕立て屋に任せる以外は全て自分で行なっているそうです。
肇興侗寨→ミャオ族の村(青曼苗寨、朗徳苗寨、西江千户苗寨)
翌日、肇興侗寨から200キロ離れたミャオ族の村(青曼苗寨)に向かいました。高速道路が整備され、途中で休息したドライブインも清潔なトイレ・飲み物やお菓子などが豊富な売店、点心や麺類などの軽食レストランがあり快適でした。

清潔なトイレ、ニーハオ・トイレ(扉や仕切りがないトイレ)は過去のものになりました。
青曼苗寨(せいまんミャオさい)
ミャオ族(苗族)の伝統的な織物や刺繍が息づく古い村であり、ミャオ族刺繍の故郷と称されています。女性たちは現在も伝統的なミニスカート風の民族衣装を着用し、中国の唐の時代に由来すると言われる独特の髪型を守り続けています。村内にはかつて日本人(韮塚善夫夫妻)によって建てられた「刺繍博物館」があり、文字を持たないミャオ族が、神話や民族の歴史をデザインとして記録してきた美しい老繍(アンティーク刺繍)や民族衣装が保管展示されています。
村に入ると民族衣装(小花苗族の特徴である膝丈のスカート)をまとった女性(潘さん)が自家製の糯米酒(もち米酒)を振る舞う歓迎の儀式「攔門酒(拦路酒)」で出迎えてくれました。ほんのり甘く香ばしい発酵風味の地酒を2杯飲むのが決まりです。

自家製の糯米酒(もち米酒)を振る舞う歓迎の儀式「攔門酒(拦路酒)」

厚手の型紙を生地に貼り付け、中綿・生地・型紙を針で通して刺繍します。

柄を出すために横糸を一本づつ縦糸を選びながら織っており、大変手間がかかっています。

刺繍博物館、一般公開されておらず、事前に申し込みが必要が必要なようです。鍵は潘燕莲さんが管理しているようです。
朗徳苗寨(ろうとくミャオさい)
村民の服装は長いスカートが特徴である為、長スカートミャオとも呼ばれています。村ではミャオ族独特なディデォロー・吊脚楼と言う木造建築の鑑賞出来るほか道止め酒歌、ミャオ族舞踊、蘆笙舞等も鑑賞出来ます。朗徳鎮は独特な少数民族の観光資源を持ち、中国民間歌舞芸術の里、全国百の露天博物館、蘆笙の里と称えられています。朗徳ミャオ族村古建築群は中国第五回目重要文物保護単位と定められています。

楊阿妮さん(55歳):朗徳出身の著名なミャオ族刺繡(苗繡)の伝承者、2014年に専門合作社(協同組合)を立ち上げ、地元の女性や研修生数百人に対して刺繡技術を指導し、伝統工芸を通じた貧困脱却や女性の就業・収入向上に大きく貢献しています。現在は自身の刺繍会社を経営し、州の非物質文化遺産(無形文化遺産)代表伝承者を務めています。

緑色の水性ボールペンで下絵を描き、溶かした蜜蝋をつけたペンと筆で絵付けをします。

ミャオ族の民族衣装の女性、銀冠(ぎんかん): 最も目を引く大きな冠。鳳凰や蝶、花などの細工が施され、歩くたびに揺れる飾りが特徴です。銀項圈(ネックリング): 首に何重にも重ねる大きなリング。重厚感があり、ミャオ族の装飾の基本です。銀衣(ぎんい): 衣服の前面や背面に、銀の板や鈴をびっしりと縫い付けたもの。
西江千戸苗寨(せいこうせんこミャオさい)
世界最大の苗族聚居村寨です。2000年以上の歴史を持ち、苗族の五次にわたる大移動の主要な集結地として知られています。山あいに建ち並ぶ1460戸を超える吊脚楼(ちょうきゃくろう)の家々が、まるで空に向かって重なり合うように立ち並ぶ光景は、まさに圧巻です。ここは単なる観光地ではなく、苗族の生きた文化と伝統を体感できる「露天博物館」とも称され、独特の建築技術や銀細工、刺繍、そして長桌宴に代表される食文化など、13もの国家級無形文化遺産が保存されています。

大北門で入場、シャトルバスで小北門に移動、白水河沿いに一番風雨橋まで歩き、シャトルバスで展望台まで往復、古街を歩いて小北門に戻り、シャトルバスで大北門に移動(約3時間)

「拦门酒(攔門酒・ウェルカム酒の儀式)」:色鮮やかな伝統衣装や銀細工で着飾った村人たちが、門の両側に並んで迎え、ミャオ族の古式ゆかしい歌や芦笙(ろしょう:竹製の楽器)の演奏、踊りなどで盛大に歓迎されます。

村に入る前に、通せんぼをした門の前で伝統的な自家製のお酒(米酒など)を振る舞われます。拒まずに飲むのが礼儀とされています。
西江千戸苗寨→貴陽→上海
12時に西江千戸苗寨から貴陽空港に移動(185キロ)し、16:15発のフライトで上海へ(18:45着)
空港からタクシーで南京東路歩行街のホテルへ(100元)、チェックイン後、外灘のライトアップを見に行きました。
上海→成田(帰国)
動画版
桂林(11分) https://youtu.be/nA0u-MypItY
トン族の村 黄崗侗寨(7分半) https://youtu.be/5miHokWCKdI
トン族の村 肇興侗寨(21分) https://youtu.be/cYexkYOHDmc
ミャオ族の村 青曼苗寨(7分42秒) https://youtu.be/SLpHPL07rm4
ミャオ族の村 朗徳苗寨(4分半) https://youtu.be/dh37hod1mtI
ミャオ族の村 西江千戸苗寨(4分 https://youtu.be/FVVkoy1henk
終わりに
今から25年以上前に雲南省の麗江を訪れて以来の中国への旅です。今回は貴州省日本観光センターの藤田さんと現地日本語ガイドの彭旭さんのお陰で、こちらの希望に沿った手配(工房アポイントと通訳)、的確な日程管理、そしてトラブル対応をしていただき、極めて内容の濃い充実した視察をすることができました。ありがとうございました。
トン族の村では各家の女性が糸を紡ぎ布に織り上げて藍染めの工程に入ります。染めが始まると乾かして卵の白身を塗って乾かし、また染めてと幾度も繰り返します。さらに布をピカピカにするために木槌でトントン、トントン叩く作業が入ります。布の準備が整うと次は刺繍です。仕立ては村に専門の方がいるとのことでした。皆さんのすばらしい技術を生活の中に活かしている日常の様子を拝見しながら貴重なお話を伺うことができました。
家族が新年や晴れの日に着るために材料を準備して制作することにたくさんの日数と時間を費やしておられます。山奥に育つ藍の葉を収穫してすぐに近くの池に入れ、やがて沈んでドロドロになった沈殿物を持ち帰りかめに入れて家の軒下で藍を育てます。日本では藍染のかめは室内に置き温度管理をしますがご当地ではその必要はないとのことです。制作過程の布や完成した衣服を手に取らせて頂きながらお話を伺っているとなんと愛情のこもった民族衣装なのかと驚きと感心でものづくりの原点に改めて触れることができました。
現在の中国は急速に発展し、空港・鉄道・道路・車・ホテル・街並み・トイレなどの衛生管理など、欧米日本と同等(場合によってはそれ以上)の現代国家であることを改めて認識しました。外交問題から国としては反日姿勢を強めていますが、国民の皆さんは我々がお会いした限りは親日で、旅行中なんの問題もなく快適な旅行を楽しむことができました。
今回訪問した貴州省の少数民俗の村には伝統的な生活と文化が残っていました。特にトン族の村(黄崗侗寨)では、売る為ではなく家族のためにトン布を織っています。家の前には藍がめがあり、機織りと草木染めが行われ、トン布を叩くトントンという音がこだまし、干された布が翻る。こんな生活文化が残っているとは奇跡といって良いほどでした。
反対にミャオ族最大の村(西江千戸苗寨)は計画的に観光化が進みテーマパークのようでした。最寄りの駅から村まで高速道路が引かれ(3時間が40分に短縮)、伝統建築の民家を民宿にリノベートし、村を完全に封鎖(村の外に大駐車場が作られ、村の中に外部のバスや車をいれない)、村の入り口では歓迎の儀式(民俗衣装の女性・音楽・歓迎のお酒をふるまう)を行い、入場料を取り(100元=2500円)、村内にはシャトルバスを走らせ、メインストリートには外部資本によるレストラン・お土産屋・民族衣装の貸衣装屋が並び(民族衣装の貸衣装に着替えた多くの女性観光客が記念撮影を行っている)、川沿いの店には美しい花が飾られ、展望台からは絶景が望める。夢の様に美しい、観光地開発の教科書になるような村づくりです。オーバーツーリズムや地域観光開発の問題をかかえる日本も参考にするべきだとおもいました。
伝統的な村の生活を維持する黄崗侗寨、観光地化を徹底する西江千戸苗寨、どちらの村も良いと思いました。できればこのままの状態が維持できたらと思うばかりです。
追記:以前の雲南省への旅をヒントにキルトで表現してみました。タイトルは「夜空を彩る舞姫たちのプロセッション」です。お時間がありましたらキルトのページ、クレージーキルトをご覧ください。




















































































































































