今回の旅行の主目的はメキシコの刺繍と織物を見にオアハカへ、パナマのモラを見にサンブラス諸島へ行くことです。オアハカはメキシコ南部の都市で、先住民率40%以上、今でも多種多様な文化や伝統が残っている「メキシコで最もメキシコらしい場所」といわれているところです。手芸が盛んで郊外の村では伝統的な手法で刺繍や織物が行われています。モラはカリブ海のサンブラス諸島に住むクナ族による幾枚も重ねた布を切り抜いて作る独特なアップリケです。サンブラス諸島はクナ族が高度の自治権を持ち、クナ族以外には事業活動ができないため、外部の資本によるリゾート開発が行われず自然がそのまま残っています。

成田からメキシコ航空でメキシコシティへ直行便で12時間半/時差15時間のフライトです。午後1時に到着しました。

空港から旧市街の中心ソカロ広場に近いホテルまでタクシーで30分ほどでした。まずはソカロ広場周辺を散策、広場では大規模なイベントが開かれ物産展やステージで演奏が行われていました。テントの中では民芸品やタコスなどのファーストフードが売られていました。ステージではラテン音楽のコンサートが行われ観客が音楽に合わせて踊っていました。

夜はソカロ広場を見下ろすレストランでメキシコ料理を楽しみました。

翌日、真っ先に国立人類学博物館に行きました。2階建で1階は考古学、2階は民俗学の展示です。マヤやアステカの展示はロンドンの大英博物館やニューヨークのメトロポリタン博物館に匹敵する素晴らしさでした。

マヤ展示室

アステカ展示室

民俗学の展示も素晴らしく、メキシコ各地の民族衣装や民芸品のコレクションは質量ともに圧倒的で、メキシコの豊かな民族性を学ぶことができました。

予約制ですが大変な人気で列ができていました

午後はメキシコ現代絵画を代表する女流画家フリーダ・カーロの博物館に行きました。民族芸術の第一人者としても有名で服飾デザイナーでもありました。

フリーダ・カーロのデザインしたドレス。左のドレスは身体障害があるフリーダ・カーロ用の皮製拘束衣がついた特異なものです

メキシコシティの動画を作成しましたのでお時間がありましたらご覧ください(6分27秒)

夕方のフライトでオアハカに行きました。19時頃にホテルに到着です。

ホテルは中庭のあるメキシコの邸宅を改装したものでした

入場料は無料でした

翌日、朝一番で織物博物館に行きました。小さな博物館です。まず最初にインディゴ(藍染)のお祭り用衣装に驚き、次に民族衣装のウイピル(貫頭衣)のコレクションに魅了されました。

オアハカ州の太平洋岸の村で行われるお祭りの衣装だそうです

ウイピル(貫頭衣)はグアテマラでも見ましたが、メキシコのものはより洗練されていました

オアハカの旧市街はサントドミンゴ教会とソカロ広場の間に広がるメキシコらしいカラフルな街でした。ソカロ広場の先にはメルカド(市場)があり食品や民芸品で溢れていました。

サントドミンゴ教会、中は黄金の輝きでした

カラフルな町並み、夜は露店がでます

ソカロ広場

メルカド(市場)

オアハカの郊外には手芸の村が沢山あり、それぞれの村には一村一品の手芸品があります。一日車をチャーターし、これらの村々の中から、午前は刺繍の村、午後は手織りの村に行きました。

サン・アントニーノ・カスティージョ・ベラスコ村
花柄刺繍の村です。刺繍作家として有名なグアダルーペさんの工房に行き、制作過程と作品を見せていただき、2点ほど作品を譲っていただきました。

全て手刺繍の家族工房です

細かい刺繍がびっしり刺されています

譲っていただいたブラウスと一緒に記念撮影です

テオティトラン・デル・バジェ村
手織りのラグ(タペテ)の村です。糸の染色から機織りまでの工程を一貫して家族で行っています。特に赤い色はサボテンに寄生するカイガラムシを潰してできるコチニールという色素を使用しています。

カイガラムシをすり潰すと真っ赤な染料(コチニール)が取れます

コチニールを溶かしたお湯に糸を浸けて染めます

300年以上使用している織機、あちこち補修して使用ていました

13代目のご当主に色々な作品を見せていただきました

オアハカの動画を作成しましたのでお時間がありましたらご覧ください(7分17秒)

メキシコシティ近くを飛んでいます

翌早朝、オアハカからメキシコシティ乗り継ぎでパナマシティに行きました。

以前パナマは治安が悪くカスコ・ビエホ(旧市街)は危険と言われていましたが、現在は世界遺産に指定され治安も良くなり散策やショッピングを楽しむことができます。海岸沿いの散歩道には露店が並びモラ(クナ族伝統のアップリケ)を売っていました。

大聖堂

手芸通り

たくさんモラが売られていました。一枚20ドルから50ドルほどでした

丁度カーニバルの時期だったので夜はパレードを見に行きました。

フロート5台+ダンサーのパレードといった構成です。パレードの沿道には食べ物の露店が並んでいました。

翌日は今回の旅行の最大の目的であるサンブラス諸島にモラを見に行きました。朝6時にホテルを出発してカリブ海の港まで2時間半、前半の道は平坦でしたが、後半は山道となり上下左右に今まで経験したことがない程のワインディングロードでした。クナ族の住むエリアは自治権が与えられ入域にはパスポートと入域税がかかります。域内のビジネスはクナ族に限られており外の資本が入れず、どこのリゾート地にでもあるような高級ホテルなどの施設はまったありません。観光客が行ける島は限定されており、クナ族の人々が住む51の島(コミュニティの島)とは厳密に分けられています。

クナ族エリアへの入域手続き待ちの車列

モーターボートでサンブラス諸島の島へ

最初に案内された島は観光客用で我々が希望するクナ族が生活しモラを作っている島ではありませんでした。

観光用の島、ビーチアクティビティが目的で、ロッジ、トイレ、レスラン、売店などがあるがクナ族は住んでいない

そこでガイドに改めて当方の希望を強く述べ特別にコミュニティの島に行くことができました。到着したコミュニティの島は観光用の島とは全く違い、サトウキビの茎を柱にヤシの葉でふかれた屋根の素朴な家が密集して並び、年配の女性は民族衣装を着て足元は裸足でした。モラを作っているお宅に案内していただいて作品を拝見し制作日数8ヶ月の前後に精緻なモラを施したブラウスを譲っていただきました。

コミュニティーの島の一つIsla Carti(カルティ島)に到着しました

外壁はサトウキビの茎を立てただけ、屋根は茅葺かトタン葺、電気はソーラ発電、水はどうしているのか?

クナ族の女性の典型的な服装、モラはブラウスの前と後ろに使用します。

訪問したお宅でモラを拝見していたところ近所の女性や子供が集まってきました

譲っていいただいたモラのブラウスです。制作に8か月かかったそうで、非常に丁寧に作られていました。

パナマシティの動画を作成しましたのでお時間がありましたらご覧ください(9分05秒)

今回の最大の目的であるパナマのサンブラス諸島に行って、実際にクナ族の女性に会ってモラの制作プロセスを見せていただき、モラの名品を拝見し、できれば譲っていいただく、という目的をなんとか果たすことができました。
日程企画の段階でモラについて調べましたが資料が極めて少なく、サンブラス諸島のどの島に行ったら良いかまったくわかりませんでした。現地の旅行会社に問い合わせましたが具体的な回答は得られませんでした。サンブラス諸島へはパナマシティから日帰りのツアーがありますがビーチアクティビティが目的のもので我々の目的とは異なります。兎に角現地に行って交渉しようということで日本を出発しました。
現地にいってはじめて観光用の島とコミュニティの島があることが分かり、交渉の末なんとか目的を果たせたのは幸運でした。
メキシコはオアハカが主たる目的でメキシコシティはあまり期待していなかったのですが、国立人類学博物館の展示に感動しメキシコシティに来てよかったと改めて思いました。オアハカは現地の旅行会社の方が大変優秀でこちらの希望を完璧に実現してくれました。やはり今回のような旅行は事前に現地旅行社を利用してしっかり手配しておく必要があることを再認識しました。

追記:フォトアルバムも作成しましたので静止画にご興味があればご覧ください
http://peng.tokyo/ギャラリー/メキシコ・パナマ(2019)-mexico-panama/