南フランス(2018)

今回の目的は南フランスの伝統キルト「ブティ」とリヨンの絹織物産業を勉強することと、今まであまり行ったことがない南仏をじっくり見て回り、各地の名物料理を食べることでした。

「ブティ」は南フランスのプロヴァンス地方発祥のキルティング技術で「白い布の彫刻」とも呼ばれており、ローマ遺跡で有名なニームから西に18キロほど離れたカルビゾンの「ブティの館 La Maison du BOUTIS」という博物館と、ニームから東に28キロほど離れたタラスコンの「ソレイアード博物館 Musee Souleiado」で「ブティ」を見ることができることが分かりました。そしてリヨンには「リヨン織物装飾芸術博物館」と「カニュの館」があることが分かりました。

日程は、ニースから入ってリヨンから帰国することとし、今回も乗継の良いトルコ航空を利用しました。宿泊はニース1泊、マルセイユ1泊、カルカソンヌ1泊、ニーム1泊、アヴィニョン2泊、リヨン1泊の7泊、観光に便利なロケーション(カルカソンヌは城内)の4星クラスのホテルとしました。移動はフランス国鉄(SNCF)をネットで予約しチケットはE-Ticketでした。ニースとアヴィニョンでは日本語ガイドつきの車をチャーターし、リヨンでは徒歩観光のため日本人ガイドを手配しました。

ニース

午前10:40ニース着、空港からニース市内を通過し海岸沿いにモナコに向かいました。途中ヴィルフランシュ・シュル・メールでフォトストップ、絶景です。モナコはテニスのモンテカルロ大会の真最中、と同時に自動車レースのモンテカルロラリーの準備(工事)で大渋滞でした。下車せず車窓からの観光です。モナコからニース方向に10キロほど戻り標高427メートルの高台の村エズ(鷲の巣村と呼ばれています)に向かいます。駐車場から坂道を登っていくと、くねくねとした小道にお店やレストランが続くお洒落な村です。頂上に植物園があり、眼下に青い海(コート・ダジュール)が広がっていました。ニースに着いてシャガール美術館に行きました。日差しの気持ちの良い野外レストランでニース風サラダをいただきました。コレクションの中心は旧約聖書を題材とする17点の作品で、見慣れたロマンチックなシャガールの作風とは一線を画した宗教色が強い作品でしたが、シャガールの本質を理解す上で大変勉強になりました。その後城址公園からニースの海岸風景を展望しました。よくテレビで見た風景です。夜はニースの最高級ホテルのネグレスコでシェフをしていた方が開いたニース地方料理の店に行きました。電話予約を取らない小さなレストランでしたが、なんとか入ることができました。素朴でやさしい味です。プリンを一つとり二人で分けていたら、さり気なくケーキをサービスしてくれました。お味もサービスも今回の旅行で一番のレストランでした。翌朝、旧市街サレヤ広場の朝市を散策しました。美しい花や新鮮な野菜を売る店や土産店などを見て、カフェで一休みしてから、TGVでマルセイユに移動しました。

マルセイユ

マルセイユ到着後、旧港からプチトレイン(4~5両連結式の市内観光バス)でノートルダム教会へ行きました。狭い市内をくねくね曲がりながら走り市内観光に最高です。ノートルダム教会は山の上にあるので、下から(旧港、海から)いつも見え、教会からはマルセイユが360度見えました。内部は美しいモザイク画で飾られ、天井から船の模型が沢山下がっていました。海に生きる人々が航海の安全を祈って寄進したもので信仰の深さと切実な祈りを感じました。夜は車で10分程の漁港でブイヤベースを食べました。魚のスープは濃過ぎ、魚は煮過ぎで、今一つでしたが、外では多くの人がワインを片手に集まっており、一緒に美しいサンセットを見ることができ良い思い出になりました。朝、旧港の岸壁で開かれるフィッシュマーケットに行ってきました。小さな舟から降ろされたとれたての魚はまだピチピチ跳ねていました。

カルカソンヌ

マルセイユから鉄道で3時間20分カルカソンヌに着きました。駅の前は世界遺産のミディ運河をめぐる船の船着場です。タクシーでカルカソンヌ城内のホテルに向かうと城壁の外で降ろされました(中には入れないのです)しかしそこには予約していたホテルの軽自動車が迎えに来ていました。なるほどこういうシステムなのかと感心しました。カルカソンヌは「カルカソンヌを見ずして死ぬな」と称えられるヨーロッパ最大の城塞都市でまさしく中世にタイムトリップした気分が味わえる街です。二重の城壁に囲まれた城塞都市の中には土産店やレストランが並び一大観光地です。日中は日帰りの観光客で溢れていますが、城内には小さなホテルが3軒しかないため朝晩は人影もなく静かです。コンタル城に入城して城壁を廻り城塞都市の全景をみることができました。これだけ保存状態の良い見ごたえのあるお城はあまりないと思います。夜はカルカソンヌの名物料理カスレ(白インゲン豆、カモまたはガチョウのコンフィ、ソーセージなどを土鍋で煮込んだもの)を食べました。お豆が良く煮えて味がしみ大変美味しくいただきました。

カルヴィゾン:ブティの家(Maison du Boutis)

ブティ協会が運営するもので18世紀と19世紀そして最近の作品が展示されています。ブティは南フランス発祥のキルティングで二枚の布にまず柄を縫って、その柄の中に後から綿を入れるという気の遠くなるような手作業の美しい作品です。近代化と共に一端廃れかけたものを協会を中心に復興され、現在ではフランス各地でグループができ活発に活動されているそうです。協会の会員の方に素晴らしい作品の数々を丁寧にご案内いただきました。最後に会長にお会いすることができ特別に館内の写真撮影の許可をいただけました。

ブティ協会会長と記念撮影

ニーム

ニーム到着後、まず街はずれの丘の上に建つマーニュの塔に行きました。ローマ時代の見張り台でかなり崩れていますが内部のらせん階段を登って展望台に上がり、ニームの全景を見ることができました。ニームはフランス最古のローマ遺跡の街として有名ですが、円形劇場や古代神殿(メゾン・カレ)といったローマ遺跡と現代の建物が融合した清潔で整った街でした。

リュベロン地域のフランスの最も美しい村をめぐる

ニームを発ちリュベロン地域のルションに向かいました。ルションはアヴィニョンから東に50キロほどのオークという黄色い顔料の原料となる岩石がとれる建物がピンク色をした村です。フランスの田舎の小さな村の歴史遺産の価値の向上や保護を目的とし、「人口が2000人以下」、「都市化されていない地域」や「歴史的建造物、自然遺産を含む保護地区を最低2箇所以上保有」など、厳しい条件をクリアした「フランスの最も美しい村(現在157)」の一つに認定されています。次にルションから10キロほど離れた同じく「フランスの最も美しい村」、岩山に張り付いたようなはちみつ色の村ゴルドに向かいました。天空の城ラピュタのモデルになった村だそうです。なおフランスの最も美しい村協会の会長はこの村の村長さんだそうです。

アヴィニョン

ゴルドからアヴィニョンに着きました。まずローヌ川の中州に渡ってアヴィニョン橋(サンベネゼ橋)と教皇宮殿の両方見える撮影スポットに行きました。1177年から1185年にかけて建設された石造アーチ橋で、建設当時は長さ920m、22のアーチがありましたが、現在は倒壊し4つのアーチが残っているのみです。アヴィニョン教皇宮殿は1334年から1352年にかけてローマ教皇の住居として建設された、ヨーロッパ最大級のゴシック宮殿です。フランス革命時に襲撃を受け一部のフレスコ画を除き内装は破壊されましたが、入口で貸し出されるタブレットのVR(仮想現実)機能で往時の華やかな内装を見ることができるようになっています。

プロヴァンス一日観光

車をチャーターしプロヴァンスの一日観光に行きました。

レ・ボー・デ・プロヴァンス

プロバンス語で岩だらけの屋根という意味の石灰岩で形成された城塞の村です。40年近く前、この村のボー・マニエールというミシュラン三つ星レストラン(現在は二つ星)に行く企画をして転勤のため行けなかった思い出があります。今回やった来ることができました(レストランには行けませんでしたが)

アルル

アルルは古代ローマ時代から中世にかけての歴史の息吹が強く感じられる街です。ローマ時代には首府が置かれ、今なお闘牛が行われる円形闘技場や劇場があります。また印象派のゴッホが滞在した15ヶ月間で約200点もの作品を残している街でもあります。昼食をとったあと円形闘技場と劇場をまわりましたが、ゴッホゆかりの「夜のカフェテラス」などの場所には行く時間がありませんでした(街はずれの「跳ね橋」には行くことができました)やはり一泊する必要があったと反省しています。

レゾリヴァード社

200年の歴史を誇る老舗で、今では珍しくなった自社工場でプリントを行っています。オーナー自ら工場を案内していただきました。会社の歴史やプリント工程の詳細を熱心に説明していただき、自社の製品に対する愛情と熱意を強く感じました。またスクリーンプリントやロータリープリントなどの最新技術を見ることができ大変勉強になりました。

ソレイアード博物館

プロヴァンスプリントの大手メーカーであるソレイアード社の運営する博物館です。ブティのコレクションは少なく、プロヴァンスの伝統衣装や最近のファッションの推移が展示の中心でした。展示を各自見るスタイルで特別に案内はありませんでした。ソレイアード社のショップが併設されており博物館よりショップが目的で来る方のほうが多いようです。

ポン・デュ・ガール

紀元50年頃ユゼスの水源からニームへの導水路として建設された高さ49mの世界一高い古代の水道橋です。1985年にユネスコ世界遺産に登録され、フランスの偉大な景勝地にも指定されています。スペインのセゴビアの水道橋(高さ28.5m)より大きく保存状態が良い美しい橋でした。

リヨン

アヴィニョンTGV駅(市の中心から少し離れている)からリヨンへTGVで1時間でした。「美食の都」「絹の街」と呼ばれるパリに次ぐフランス第2の都市です。 ローヌ川とソーヌ川の2本の川が街を横切り、背後にローマの遺跡を残すフルヴィエールの丘がそびえ、旧市街と呼ばれる古い町並みはユネスコ世界遺産に登録されています。

リヨン織物装飾芸術博物館

リヨンのみならず世界の織物芸術作品と産業の歴史をあますことなく伝える博物館で、織物芸術の分野でヨーロッパ最大級の規模を誇ってます。残念ながら写真撮影が禁止されているためコレクションをご覧いただけませんが一見の価値があります。

カニュの館

カニュとは機織り職人のことを指し、このエリアには織物工房が軒を連ね一日中機織りの音が響いていたそうです。使用されていた織り機は当時発明されたジャガード式半自動織機でカニュの館では機織りの実演してくれました。このジャガード式半自動織機が先日行ったベトナムでは現役で使用されていたのを思い出し感激しました。

その後、市庁舎やバルトルディの噴水があるテロー広場にある伝統染色工房に行きました。インドから伝わった木版プリント(2011年に行ったインドのグジャラート州では今でもこの方式が使用されていました)の技法を改良し金属製の柄を打ち込んだ木版を使用したプリントを実演してくれました。またスクリーンプリントなどの伝統的な染色も行っており、美しい布製品を販売していました。

バルトルディの噴水と市庁舎

リヨンはパリによく似ています。街の中心には近代的な高層ビルはなく、高さとスタイルが統一された石造りの整然とした町並みが続き、セーヌ川に似たローヌ川とソーヌ川が流れています。しかもパリよりコンパクトで主要な見どころには歩いていけて便利です。朝、ソーヌ川沿いのマルシェ(朝市)に行きお土産にオリーブとチーズを買い、正面には裁判所とフルヴィェールの丘の上のノートルダム寺院を見ながらソーヌ川にかかるパレ・デ・ジャスティスの遊歩道を渡って世界遺産の旧市街に行きました。リヨン・サン・ジャン大聖堂に入ってから、ケーブルカーで古代ローマ劇場へいきました。それから歩いてノートルダム寺院(ノートルダム ド フルヴィエール バジリカ聖堂)に行きました。9世紀末に、建築家ピエール・ボッサンによって設計され、費用は献金によって賄われました。聖母アリアに捧げられた建物で、大聖堂の最上部に聖母像をいただいています。壮大な聖堂の中は黄金色の装飾がまばゆいばかりに輝き豪華絢爛です。夜はライトアップされ印象的でした。見晴らし台からリヨンの街並みを展望しました。

 夕方、リヨン・サン=テグジュペリ空港を発ち、イスタンブール乗継で無事成田に帰国しました。

さいごに

今回も多くの方々のご協力で大変有意義な旅行となりました。事前に得られたブティやプロヴァンスプリントについて情報は極めて少なく現地に行って初めてその実態にふれることができました。しかしフランス語が出来ないため通訳なしには表面的なことしか分からなかったでしょう。幸いアヴィニョン在住の串川さんとリヨン在住の藤原さんという極めて優秀なガイドさんによる通訳のおかげで良く理解することができました。またブティの家ではブティ協会の皆さんのご協力でブティの歴史や背景など得難い知識を得ることができました。心より感謝したいと思います。

観光的には好天に恵まれ南仏の風景や食を堪能することができました。旅行中にフランス国鉄(SNCF)のストによりカルカソンヌ〜ニーム〜アヴィニョンという2区間がキャンセルとなるというアクシデントが発生し、一時はどうしたものかと困惑しましたが、なんとかバスへの変更で対応でき事なきを得ました。終わってしまえば良い思い出となりました。

当初、昨年につづき友人夫妻と4人で旅行する予定でしたが、ご主人がご病気となったため急遽キャンセルとなり、私達夫婦だけで行くことになり大変残念でした。次回は是非またご一緒したいと思っています。