2000年日本ヴォーグ社 キルトデイビジョン 主催でグアテマラの生活文化と織物 講師 鈴木 誉志男さんによる講演会が開かれました。写真や文章を通して見えてくるグアテマラは歴史が凄い 。そこに暮らす人達の生活文化、色彩、スペイン語圏であること、そしてコーヒー。わたしの探していたものが偶然に目の前に現れたのです。講演会の会場にはコーヒーが用意されていていただきながらお話を伺うことになりました。現地の女性が纏っているものはウイピルという刺繍を刺し込んだものまたは織物である事を知りました。それぞれの部族によって模様が異なることや一つの部族ではその村の象徴である模様を刺繍してあるウイピルを赤ちゃんからお年寄りまで全員着ているとのことには驚きでした。部族ごとにどの様な模様のウイピルを着ているかを示したチャートを見て思った事は現実に今時ユニフォームの様に村人全員同じ模様の衣服を身に着けて生活している事がとても尊く感じました。ここからがわたしのワクワクの始まりです。行ってみたい どうしても行ってみたい。そして2005年ついにグアテマラ行きが実現しました。
グアテマラは中央アメリカの国でメキシコの隣に位置しています。グアテマラについての詳しい知識はコーヒー生産地であるということ以外にほとんど持っていませんでした。ウイピルの美しさに惹かれ旅の計画を立てながら調べてわかってきたことは「先住民(マヤ族)の末裔と混血(メスチソ)が人口の大半を占め、今でも部落毎に異なる独特な色や柄の衣服を日常的に身につけて生活しており、緯度的には赤道に近く年間を通し常夏ですが今回訪問した都市は標高が高く日中20度前後と涼しく、夜間は寒いくらい。」と言うことぐらいでした。当時筆者はホノルル在住でした。限られた観光資料を持ちグアテマラ・レインボウーと称されるカラフルな衣装ウイピルを求めて、古都アンテイグアから最大の市場が立つチチカステナンゴや富士山のような美しい山に囲まれたアティトラン湖に行ってきました。
グアテマラ・シティー
日本からもホノルルからも直行便はなくアメリカ本土かメキシコで乗り換え首都グアテマラ・シティーに入ります。治安が極めて悪く観光には不向きですが、イシチェル民族衣装博物館は必見です。「グアテマラ・レインボー」と評される色鮮やかな民族衣装や織物のコレクションが素晴らしくグアテマラ織物の全体像を知るのに最適です。https://museoixchel.com/home#/museum/
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アンティグア
グアテマラ・シティーから車で1時間ほど、バスでカーブの続く山あいをしばらく走って行くとウィピルを着た女性がカゴを持ったりカラフルな布に荷物を包み背負いながら歩く風景が目に入ってきます。16世紀頃から約200年にわたってグアテマラの首都だった古都で世界遺産に登録されています。多数の教会、スペイン植民地時代の建築物や遺構、街並みや敷石の道など美しい街です。治安も比較的良く観光の拠点となっています。
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チチカステナンゴ
アンティグアから車で3時間、マヤのキチェ族のの文化が色濃く残る町、中央広場に木曜日と日曜日にマーケット(市)が開催され生活品や食料品だけでなく民芸品なども各地の村々から先住民の方々が売りに来て大変な賑わいです。カラフルな民族衣装の女性が溢れまさしくグアテマラ・レインボーの世界に興奮しました。
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アティトラン湖
「世界で一番美しい湖」と言われており、富士山に似た優美な三つのコニーデ型火山に囲まれた標高1560メートルのカルデラ湖です。湖をとりまく緑濃い外輪山には、色鮮やかな民族衣装とマヤの伝統文化が受け継がれる20以上のマヤの村々が散在しています。
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パナハッチェル
観光の拠点となる湖畔の町です。布地屋さんがありました。グアテマラらしい布地がたくさんありました。
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サンティアゴ・アティトラン
アティトラン湖で一番大きなマヤ・ツトゥヒル族の村。織物・刺繍・陶器など手芸が盛んで格子模様に花や鳥の刺繍文様がかわいい。細い帯をぐるぐると巻きつけた帽子も独特。金曜日に開かれるマーケットに合わせてパナハッチェルから船で行きました。
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マーケットの賑わいを離れ港に戻る途中に絣織りの工房がありました。驚いたことに絣糸のくくりから機織りまで全て子供が行っていたのです。話をしてみると小学校5年生の頃から手伝いを始めたとのこと。今は中学生。学校から帰るとここで仕事をしているそうです。片言の日本語 ありがとう、さよならを知っていました。誰が教えてくれたのかを尋ねるとご当地に援助に入っている人たちから学んだようです。宿泊したホテルの近くのレストランで食事をしていた時一人の日本人男性から話を聞くことができました。日本からのスタッフがここの女性たちの技術で制作した作品を正当な値段取引で市場に出せるよう、材料の仕入れから制作、販売そして売り上げを銀行へ入金。そのサイクルを指導されているとのことでした。
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パナハッツェル周辺の織物の村を訪ねました
サンタ・カタリーナ・パロポ
村ごとに異なる民族衣装のデザインのなかで、高い人気を誇る“青いウイピル”の村として知られています。伝統的なバックストラップ(後帯機)で織られていました。
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サン・アントニオ・パロポ
山の斜面に造られた町で、湖から山の中腹に掛けて建物が段々に建ち並んでいます。住民のほとんどがマヤの先住民族カクチケル族で深い青を基調に紫や赤の縦糸が織り込まれたウィピルを村の多くの女性が身に付けています
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ソロラ
パナハッチェルから車で20分ほどのカクチケル族の町、火曜日と金曜日にマーケットが開かれます。縦縞を基調に細かい織りや縫い取りなどが施された衣装が見ごたえあり。民族衣装を着た男性も多い。
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ティカル
世界遺産のティカル遺跡を見に、車でグアテマラ・シティーへ戻り空路フローレスへ移動、更に車でティカルに行きました。ティカルは7世紀に繁栄し9世紀に消滅したマヤの遺跡です。密林の中に50以上の神殿ピラミッドが林立していました。第2神殿に登りテラスから第1神殿などを展望しました。
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動画版(12分48秒)
あとがき
近代化工業化の進展により伝統的織物産業が廃れてしまった国が多くなっていますが、グアテマラでは今でも盛んで、手織物の宝庫です。
グアテマラの北西部高原地帯は古代マヤの末裔で、およそ23の部族が1500年以上も続く伝統を守りながら暮らしています。織物の技術は、マヤの時代から親から子へと連綿と受け継がれ、現在でも老若男女、あらゆる人々が伝統的な織物を身に纏っています。
この地域の80あまりの村は、村ごとに独自の織物があり、衣服の形、色、模様など、それぞれの村ごとに個性のある織物は、驚くほどバラエティに富んでいます。
観光客の勝手な希望かもしれませんが、いつまでもこの麗しい服装文化・織物文化が続いてほしいと願っています。
追記:2005年に訪ねた際、グアテマラのイシチエル民族衣装博物館でかすり織についての説明に目が留まり、それがきっかけとなり藍染やかすり織の旅を現在も続けています。工房に入れていただいて工芸・手芸を直に拝見させていただき、人々の暮らし方や精神性をリスペクトしてお会いするよう心がけています。
2022年1月記