ベルゲンからハーダンガーフィヨルドの港ノールハイムスンまでバスで1時間半、そこから高速船に乗って1時間、小さな村ウトネにつきました。ホテルの前には船着場があり対岸とを結ぶフェリーが1時間に1本ほど、それに合わせて車やバスが並ぶ他は人通りもほとんどありません。村の周りはサクンボやリンゴの果樹園で丁度収穫の時期でした。ホテルを出て右にフィヨルド左に民家やさくらんぼ畑を見ながら10分ほど歩き坂を登った所にハーダンガー民族博物館がありました
。
ハーダンガー民族博物館

フィヨルドと村を見下ろす立派な博物館です。アポイントの時間には少し早かったのですが学芸員の方に暖かく迎えられました。我々以外には参観者はおらず貸し切り状態の贅沢な見学でした。学芸員の方のご案内で2階の展示室にあがりました。広い展示室の左側にはハーダンガー刺繍を施された色とりどりの民族衣装衣装が並び、右側には白い布のハーダンガー刺繍が並んでいます。日本で勉強していた時には白い布に刺す刺繍としてしか認識していなかったですが、民族衣装を飾る華やかな刺繍があることを学びました。古い写真を見るとハーダンガー地区は辺境の地であり、生活も貧しかったことが分かります。そうした厳しい生活の中でも結婚式などのハレの日には美しく着飾ったのです。
そのために女性たちは丹精込めて刺繍を施したのです。そうした衣装を揃える必要がある場合は親戚や知人に声をかけて分業で始めたそうです。何しろ細かい刺繍をするために時間が必要です。現在でも特別な日の為にこれらの民族衣装を着るそうです。だれが制作しているのでしょうか?今は親族で制作をするのではなくどこかにオーダーするという答えでした。どこという具体的な答えではありませんでした。ハーダンガー刺繍をするグループや集まりがあるようでしたらお会いしたい旨のお願いを事前に申し入れておいたのですがかないませんでした。もう携わる女性がいない様です。でも希望のある答えを聞くことが出来ました。ハーダンガー刺繍が他の国に渡り人気のある手芸となっています。それを知りこの地域の若い女性の間にハーダンガー刺繍がリバイバルとなり少しずつ少しずつ習い始めているとのことでした。


これらの古い水彩画や写真を見ることで当時のリアルな日常の様子を教えてもらえます。
屋外は古民家園になっています
ハーダンガー民族博物館の学芸員さんのアドバイスでアガの民族博物館とボスの民族博物館にもハーダンガー刺繍のコレクションがあることが分かり行く事が出来ました。アガはウトネから車で30分ほど離れた村ですが時間的に交通手段がありませんでしたが、ありがたいことにウトネの学芸員さんがご自分の車でアガの民族博物館まで送って下さいました。フィヨルドを挟んで両岸の高い岩壁から落ちるいく筋もの滝を見ながら雨の中のドライブでした。
アガ民族博物館


博物館への入り口となる小道の掲示板に美しいポスターが貼られていました。ハーダンガーの民族衣装の特別展の案内です。ウトネに入って始めて知り得た情報です。学芸員さんに御礼をお伝えしてここでお別れしました。感謝の気持ちでいっぱいです。帰国後 ヴォーグ社発行のステッチデイと手づくり手帖をお送りしました。
登りの小道を少し歩いて行くと古民家が点在しています。ガイドツアーは3時にスタートとの事でしたのでテイーハウスでコーヒーをいただきながらひと休み。民族衣装を見学したい事を伝え案内の学芸員さんを待ちました。やがて女性の学芸員さんが鍵を持って一軒の古民家の扉を開け部屋のライトをつけてくれました。先ず織り機が置いてありました。次の部屋には民族衣装と胸あてやリボン、エプロン、ブラウス 、 スカート、写真等々小さな部屋に隙間なく展示されていました。学芸員さんはバルセロナの大学で勉強をされたとのことで英語とスペイン語での会話となりました(私も3年程マドリードで暮らしておりましたので多少スペイン語ができます)。
ひとつの写真フレームを取り上げてここのコレクションは一人の女性の物で自身で刺繍した衣服と家に代々伝わってきた衣服、お母さん お婆さん ひいお婆さんとそれぞれの時代に必要な衣服を作り保存してきたものですとのことを話して下さいました。この写真は寄贈者の15歳の時撮影されたものですとのこと。衣服すなわち展示されている民族衣装は産まれたばかりの赤ちゃんのために用意されたものから成長に沿って制作されたサイズの違う

衣服、もちろん全てにハーダンガー刺繍が施されています。一針一針刺繍をしてベビー用品を揃えて新しい家族を迎えていたのですね。織り機の上に彫刻をした手製のアイロンが置かれていました。やはり、花婿が花嫁の為に用意したアイロンです。幾つかの質問をさせていただきました。この辺の地域にはハーダンガー刺繍をしている方や皆で集まって刺繍をするグループがありますかとの問いには、たぶんいないでしょう。もう必要がないし時間がかかります。でも特別な日には伝統的な民族衣装を着るそうです。仕立ててもらうために時間を十分にとってどこかにオーダーメイドするそうです。係の女性の民族衣装はグリーンをベースにしたそうです。色を選ぶために特に意味を考えますかとの問いには個人的な考え方ですけれど自身の好きな色だからだそうです。では販売されているハーダンガー刺繍の品々はどこで制作されているのでしょうねと聞くと、アフリカでハーダンガー刺繍を作っていると聞いています。工賃が安いそうです。

うーん 伝統を受け継いで繋いでゆく事の難しさをこの地でも知る事になりました。でも どこかで受け継がれて行くのですね。仕事にして現金収入が得られ生活が向上する地域も発生する事になります。たぶん ハーダンガーでも静かに 密やかにひと針ひと針刺繍を続けている女性はいると思います。との事でした。楽しい時間を過ごさせていただきました。バスに乗り遅れるとウトネに戻れなくなります。御礼とお別れの挨拶をしてサクランボ畑とリンゴ畑を見ながらバス停まで20分程歩きました。
翌日ウトネから再度高速船にのってハーダンガーフィヨルドの最深部のアイフィヨルドまで2時間のフィヨルドクルーズを楽しみました。両岸には山の中腹まで「さくらんぼ」と「りんご」の畑が続き、各所で滝が流れ落ち、村が現れます。船が立ち寄る港には大抵クラシックなリゾートホテルがあり、水面(海面)は鏡のようで地上の景色が写りこんで絵のような美しさです。
アイフィヨルド
ハーダンガーフィヨルド最深部の村です。車で20分ほど山道を登るとノルウェー屈指の名滝ヴォリングスフォッセンがあります。谷の両側から2つの滝が流れ落ちて谷底で一つになりまるでU字型の滝に見えることで有名です。我々の行った日は残念ながら片方の滝の水量が細くそれほどには見えませんでしたが、それでも正面の滝は二段三段に落ち雄大でした。アイフィヨルドのホテルは港に面して建ち窓からの景色はまさにフィヨルドのホテルそのものです。驚いたことにこんなフィヨルドの奥まったホテルに中国人と韓国人の団体が入っていたのです。日本人は我々だけだというのに。ところがホテルの前にはノルウェーの国旗の他、アメリカ、イギリス、スペイン、ドイツの旗と日本の旗が立っていましたが、中国や韓国の国旗は立っていないのです。
アイフィヨルドからバスでボスに行きました。ボスはベルゲンと首都オスロを結ぶ鉄道とハーダンガーフィヨルドとソグネフィヨルド方面行きのバスの発着点の都市です。湖を取りまく山の上にボス民族博物館があります。
ボス民族博物館


案内では徒歩15分とありましたがとても無理で駅からタクシーでくねくね道を結構高い場所へと登った所にありました。デスクで刺繍と民族衣装の見学をしたい旨を伝えると2階に展示してありますとのこと。上がって行くと広々としたスペースには様々な生活道具が分かり易く展示されていました。見学者は私たち2人だけです。先ず目的の刺繍とコスチュームのブースヘ行きました。
ここで大変感心した事は胸あてのコレクションが豊富でガラスを張った薄い引き出しに大切にスッキリと見易く保存している事でした。はじめこのたくさんの引き出しを備えた箪笥状のものを見つけた時開けて良いものか迷ったのですが開けました。一段そして一段と撮影もしました。すごい数量と高度なデザインと技術に驚きの連続です。見学を終えて1階ヘ降りて行くとデスクの女性がそっと「引き出しには気がつきましたか?」と語りかけて来ました。「はい、見事なコレクションですね。撮影もさせていただきました。」と答えると笑顔で「OK Good 」お礼を伝えて野外の古民家のガイドツアーに参加しました。ドイツ イタリア 日本からの見学者ですので英語で説明をしましょうという事になりました。









































































































































































































































































































